わたしの生活


IMG_0891 IMG_0869 IMG_0879 IMG_0888  ウディ・アレンの’93の映画、”マンハッタン殺人ミステリー”(英:Manhattan Murder Mystery)はアレンの映画の中でも好きな方に入ります。わたしがアレンの映画に求める要素*1が全て揃っている上に、時代感と洗練されすぎていないニューヨーク感が、説明できない良さを醸しています。

 内装美術について、たとえば伊丹十三の映画の内装*2が完璧だとすると、アレンの映画は7割くらいにまとまっていると思います。その3割に「遊び」を感じます。遊興の「遊び」ではなく、いわゆるネジなど結束部分に持たせる「遊び」です。この遊びは、「あえての外し」や「親しみやすさ」ではなく、都会育ちのアレンから出る、都会の人特有の多少のダサさであり、本物のセンスなんだと思います。

 アレン演じるハリーの勤めるハーパースの事務所、真鍮のスウィングする照明。ベッドサイドを散らかした本や新聞と電話器、髪を梳かしたあとサプリメントのピルを取るダイアン・キートン演じるキャロル。週末マンハッタンに帰って来た、ブラウン大学に通う息子にツナの料理を作ったハリー。帰宅したキャロルとの、キッチンでの口論。軟派な新聞。白いタートルネックに合わせた、白いスーツ。

 アニー・ホールやマンハッタンのように映画自体の存在がカッコイイというものでもなく、インテリアのように全く漏れのない均整もなく、セプテンバーのような湿った感傷*3もない、のに説明できない良さがあります。この良さは全く説明がつきません。

 わたしが生活のセンスを見直すとき、思い出すのがこの映画です。

 

*1 ウディ・アレンによる監督、ウディ・アレンによる脚本、ウディ・アレンの(長めの)出演。

*2 一番最高なのは、伊丹さんの湯河原の自宅を使った『お葬式』。お葬式に出てくる東京の家は麻布狸穴町の伊丹さんの自宅だったのでしょうか。

*3 そもそも、ミア・ファローが好きじゃないです。ウディ・アレンについていくパワーが無いです。