ダボジの茶筒


IMG_1797 IMG_1815  「ダボジ」というのは、父の祖父の渾名です。父が結婚する頃には死んでいたので、母もダボジを知りません。

 父の父は昭和ヒト桁生まれで兄もいたはずなので、ダボジは恐らく明治生まれの人でしょう。私も遺影でしかダボジを知りません。禿頭で、いつも絵に描いたようにカッカしていたそうです。遺影で見ると荒木経惟さんに少し似ています。特に荒木さんが描くアラーキーの似顔絵に似ています。母が結婚前に父の実家に遊びに来た時、ダボジは既に死んでいましたが、家族がおじいちゃんのことを「ダボジ」なんていうふうに渾名で呼んでいるのを聞いて、育った環境での習わしの違いを感じながらも、ダボジに親しみやすさを感じたそうです。

 先日帰省したときに、むかし実家で使っていた茶筒を貰ってきました。真っ黒になっていましたが、子どもの頃から見ていましたし愛着もあったので喜んで貰い受けてきました。おばあちゃんがお嫁に来た時には既にあったというので、恐らくダボジのか、それ以前のものなのではないかとのことでした。

 クリームクレンザーとクエン酸を混ぜて磨くといいとおばあちゃんに教えてもらい、その通りにしたら、見事な金魚が出てきました。金魚を見つめながら、大正時代、昭和初期、戦時中、戦後、高度経済成長、バブル、平成とおよそ100年も家族が使い続けてその家族が続いてゆくということを呆然と考えました。骨董屋さんで古いものを買って使う、というのとはまた違う特別感があります。

 恐らく地元燕三条の職人が作った品でしょう。蓋は、ただ載せただけで、自分の重みでするすると滑らかに落ちてぴたりと着地したとき、密閉されます。