柳川もどき


IMG_0800 IMG_0797  母が作ってよく食べさせてくれていました。父の好物だからでした。

 どじょう鍋のどじょうの代わりに挽き肉を使うという「柳川もどき」は、もとは辰巳芳子さんの料理です。(どうも、辰巳芳子さんに「レシピ」という表現は違う気がして・・・。)「コツは合わせただしが冷たい状態で、挽き肉を入れてどろどろに混ぜること」というのも毎回のように聞いていました。自分が家庭を持つようになって、母の作っていた料理をなんとか思い出しながらこしらえ、食卓に出すときの、少し晴々しい気持ち。反応が良いと、いつもより嬉しく、反応が無いと、いつもより寂しいです。

 母の得意料理はすべて、父の好物でした。先日帰省したとき母は「私はこの人が喜ぶことを第一に考えてた、お前たちの好物を作ろうなんて考えてもいなかった」と振り返っていました。両親の男女の絆の強さに、ジンとしました。子どもとして置いてけぼりにされている寂しさを、幼かった頃は感じていませんでした。それが当たり前でそれ以外がなかったからです。今もまた、独立して自分の家庭を持っているので感じてはいません。ただ、今の自分が、幼かった頃の自分を思い出す時だけ、少しそんな気持ちになります。ただ懐かしいだけじゃないけど、辛いわけでも泣きたいほどでもない、もうほとんど見えない古い痣です。