竹の繊細なカトラリー


IMG_2644  沖原沙耶さんという方がつくる繊細な竹のカトラリーに一目惚れしました。

 先日、祖師谷にあるごはん屋ヒバリさんで個展をやっていたので、小田急の各停に乗り出向き、セイコさんの美味しいピビンバを食べて、お箸とスプーンと調理用のへらを買ってきました。桜が終わったあとの、あたたかい日差しがぎこちない若い春の日でした。窓を開け放してあって風がすーっと通っていました。細長いテーブルに細く細く削りだされたお箸が並んでいるのも目に涼しく、とても気持ちが良かった。BGMもなく、風の音、食器が触れ合う音と水仕事の音だけです。

 特筆すべきは調理用のへらです。ほぼ柄が伸びたような細長い形が珍しく、これがとても使いやすいのです。鍋や具に対してへらが大きすぎて混ぜにくい時があります。チャーハンやみじん切りの具なんかには、大きめでもいいかなと思いますが、これくらいコンパクトになっていると、具と具の間を気持ちよく滑り、一口大の根菜など特に混ぜやすいです。2本あったものが、私が初日に買い、もう一つもすぐに売り切れてしまったそうです。

 箸は、多少重みがあったほうが安定すると思います。その点このお箸は少し軽いので手の中で踊るような感じはあります。しかし、「掴み」は非常に良いです。掴んだものを全く離しません。そして当然、口当たりがいいです。細い箸や、リンと鳴るほど薄い磁器、うすはり、など軽い口当たりの食器が大好きです。もちろん、土のあたたかみを感じながらお茶を飲みたい時もありますので、単に気分屋なのですが。

 木のカトラリーは、たまにオリーブオイルをすり込んでメンテナンスしています。オイルを少し含ませた古布で拭った瞬間、活き活きとしたような、艶っぽいような、表情になります。表現が適切かわかりませんが、全て塗り終えてひとところに収まったカトラリーたちには、セクシーな感じがあります。先日九州の母の実家を訪れた時、祖母が骨董の古い漆器に長崎の椿油を塗っていました。その時も一瞬で表情が変わり、当時の婀娜が吹き込まれ、物語が浮きあがってきました。