蕗の薹のかおり


IMG_2118  春の僅かな間、蕗の薹にありつけます。蕗の薹を食べると、あまりにおいしくて寂しくなってしまいます。これが年中食べられるような馬鹿な世界にはしてはならないぞ、と毎年強く思います。

 蕗の薹が旨いと思うようになったのは、はたちを過ぎてからでした。砂糖とミルク無しでコーヒーを飲み始めたのは中学校1年生でしたから、それに比べたらかなり遅かったです。強い香りと苦味という点では一緒の抽斗に入りそうですが。

 7,8年前に、上りの東海道新幹線で席が隣り合ったことから仲良くなったSさんはフードコーディネーターです。自分の親ほど歳が離れていますが、私のことを「ずっと友だち」と言ってくれる人です。そのSさんが作ってくれた蕗の薹と浅蜊のスパゲッティで、私は蕗の薹がとても好きになりました。浅蜊も、このころになるとフチまで身が太って旨くなります。このスパゲッティは簡単に言うと、ボンゴレ・ロッソに蕗の薹が入っているというものです。当時Sさんが住んでいた荏原のライオンズマンションの9階からは春霞の富士山が見えていました。あれから何年か経ちましたが、毎年自分でも作って食べています。トマトの酸味、オリーブオイルの油分、浅蜊の旨味、蕗の薹の苦味、パスタの粉の味がばっちり決まると、堪えられない旨さです。

 先日帰省した際に庭で摘んだ蕗の薹は、まず天ぷらにしました。まだ開いていない、ツボミの状態で贅沢です。まだ残っています。とっておきのスパゲッティを作ろうと思います。