96年の映画『クラッシュ』


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 自動車が破壊されることに性的興奮を覚えるというフェテッシュをテーマにした変わった作品。こういう際物は必ずしも私の好みではないが、ジェームス・スペイダー主演なのでとりあえず鑑賞した。
結果的にこの映画はかなり面白いものだった。
 車さえクラッシュしていればそれで快感で、相手は性別も問わず誰でもいい。破壊された車に欲情するのだからそれは当然なのだ。しかし、観ているとそこには愛があるということがよくわかってくる。彼らは破壊された車を愛しているのではない。じゃあ何を愛しているんだろう。
 破壊された車によって生まれた性的欲求をぶつけ合う生身の人間同士。その時によって相手は違うし、そしてそれはその時限りかもしれない、でもなぜだろう。そこにははっきりとした形の愛が見えた。不思議な現象なので言葉で説明するのが難しい。眼の前の相手以外のところから性的興奮を得ながら貪るように抱き合う人間をみていると、いわゆるフェテッシュのない「見つめ合って愛し合う二人」よりもより強い結びつきと、深い愛を感じた。
 私は「愛」という言葉を「定義ができない、何かあたたかいもの」として使用している。