The Ironing


IMG_1332  乾燥機から取り出してシワシワになってしまったピロケースにそのまま枕を詰め込んでいたら、「そんなシワシワな枕じゃ」と指摘され、こんな夜中に・・・とガックシきながらアイロンをかけました。ブリーフも「シワシワだと士気が」というので、かけています。前どこかでも書きましたが、夜のアイロンがけには少し切ない思い出があります。コンサル時代は朝方帰宅して、アイロンがけをしてからベッドに入っていました。帰宅してすぐは頭が興奮していて眠れませんでした。

 何年前かは忘れてしまいましたが、あの夏は特別忙しく、帰宅すると4時頃になっていたと思います。シャワーを浴びて髪を乾かす気力は全く残っていません。何とかお化粧だけ落として会社着を脱ぎ、髪をほどいて白い綿のワンピースの寝間着に着替えてから床にぺたんと座って、アイロンがけをするんです。翌日着てゆくシャツやハンカチがある日はそんなものを、かけるものがないとパジャマやピロケースやティーシャツなんか、とにかくなんでもいいから、アイロンがけが必要でした。

 仕事が終わってからも1,2時間は、脳みそは銀色の光を放って覚醒したままです。ブルーライトを蓄光しているんだと思います。夏の夜、ベランダを開け放しておくと、走り去る車の音がはっきりと聞こえてきます。信号が赤になると車がとまって、青になって一呼吸置いて走り出してゆく単調なリズムがあります。アイロンがけをするときは音量をごくごく絞って海外ドラマを流していました。英語の会話が聞き取れないほどの柔らかい微音となって単調なリズムと一緒になります。20分ほどそうしてアイロンをかけていると、驚くほど頭のなかが空っぽになっていきました。脳みそもだんだんとダウンライトしてゆき、最後は「じん」という微かな芯だけになります。外が少しづつ明るくなり始める前にシーツに入ってゆくと、すっと一瞬で、面白いほど眠りに落ちてゆきました。