私がジェルネイルを辞めたわけ <2>


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(前回からの続き)

 しかし道玄坂の上にあったNから始まるネイルスクールは、由緒正しき学校でした。
「ネイルアートよりもネイルケア」「ジェルよりもスカルプチュア」というネイルに関する根本を主義としていました。ネイルアートの繊細さよりも、自爪を美しく見せ、更に強度を持たせるための、爪のエッジの形状、甘皮を的確に処理するためのニッパーの刃の角度、美しく素早くネイルポリッシュを塗るための動き方や姿勢、などを優先していました。

 スカルプチュアというのは簡単に言うと、つけ爪です。脱着可能なものではなく、特殊な樹脂や接着剤を使って自爪に直接付けてしまう技術です。もともとはハリウッドで撮影のためにゾンビの特殊メイクを担当したヘアメイクさんが開発したつけ爪の方法で、以後はオシャレを楽しむ人だけではなく、病気や事故などが原因で爪の形にコンプレックスがある方などにも愛用者がいました。

 ネイルケアの重要性というのは簡単に頭で理解できましたが、なぜ、このスクールがジェルネイルよりもスカルプチュアを重視したかということは、自分がジェルネイルを辞めた今、よくわかるような気がしています。スカルプチュアというのは、筆に取った柔らかい樹脂を爪の上に載せて「その人の手の形に合った理想的な爪のかたち」を筆を器用に使って素早く形作ります。5分ほどでカチカチに硬化するので一瞬の作業です。硬化後、長さ厚みや全方向からのフォルムを点検しながらヤスリをかけて完成です。

 何が言いたいかというと、素早く「理想的な爪のかたち」を作るには、「理想的な爪のかたち」というものを「知っている」ことが絶対的に必要だということです。それは無論ネイルケアにも言えた話で「一番綺麗な自爪の状態」というものを徹底的に知っていなければ、その状態を再現することが不可能でした。つまり最終的に私が何を理解したかというと、そのスクールの主義は「一番理想的な状態や形を理解すること」であったということなのです

 そしてほぼ同時に、私の中で「爪を含んだ一番綺麗な手の姿」というものが確定したのです。



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