私がジェルネイルを辞めたわけ <3>


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(前回からの続き)

 それは昔観た「アトリックス」というハンドクリームのコマーシャルの中で空中で軽快にパパンと両手を打ってみせるその手でした。まさにあれだ、と確信したんです。そこにはもっちりと健康的な膨らみを帯びた手指に多少のフリーエッジ(爪の先端の白い部分)をもった何も塗っていない爪があったはずです。その瞬間から、私はまず自分自身にネイルアートを施すことを辞めていました。ただ便利なジェルネイルだけは続けていました。ベージュのワンカラーです。たまに気分で濃い赤を塗っていました。

 一方で私のネイルアートを愛してくれた方々は、足繁く私のサロンへ来てくださいました。何ていうのか、とても不思議でしたが、とても人間性の濃い、感度の高い方々ばかりで、施術時間中は刺激や情報や人生の交換をさせていただきました。私はひとりひとりのクライアントの皆様を本当に尊敬していました。

 だからこそ、ネイルアートを辞めた自分がネイルアートを施し続けることに背徳感を感じていました。私の中で確立していた「爪を含んだ一番綺麗な手の姿」を提供していないこと、むしろ尊敬するクライアントの皆様をミスリードしているのではないかという背徳感です。ありがたいことに毎日予約を頂いていましたが、求められるありがたさと、提供していることのギャップに毎日悩んでいました。
 そんな中、夫の都合で転居することになり、一時サロンをお休みすることになったことが大きな転機となりました。引越の都合で、ジェルネイルの道具を1ヶ月間倉庫にプールしていました。その間、自分もジェルネイルが出来ず、仕方なく自爪に戻してケアをしてポリッシュを塗って生活していました。



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