ビデオ鑑賞の癒やし」カテゴリーアーカイブ

タランティーノ作品の中のクリストフ・ヴァルツ

July 31st, 2016

スクリーンショット 2025-05-05 0.46.21
ポランスキーの「おとなのけんか」で大好きになったクリストフ・ヴァルツが出てるってことで、観ず嫌いをしてたクエンティン・タランティーノ作品の「イングロリアスバスターズ」ですっかりタランティーノの作風に惚れたわたしは、その次の作品にて、またもやクリストフ・ヴァルツが助演をつとめる「ジャンゴ」を鑑賞。(前置きが長い長い)


かなり血を見せる残虐なシーンが多いが、面白かった。奴隷の行進を真上から撮って、南部の地名を大きく入れるなど…シビれる!!こういう作為的な作り方って苦手なはずなのに、抗えない!!ヒャハ!!
またラストシーンでダイナマイトで爆発しているデカプリオの館の前で、再会した妻と馬に乗る、言葉に出来ないシーン。真横から近めでのカメラワークと尺など、絶妙なバランスで素晴らしいシーンだった。
イングロリアスバスターズでは最初のフランスの田舎の酪農やってる家のシーンすごく綺麗だった。正方形の窓から見せる果てしない草原、タランティーノの平面構成力の強度!!


ジャンゴ後半で、南部有数の奴隷を有す大農場の主の役でデカプリオが登場する。趣味の悪いブヨンとした白人の金持ちくず野郎の役が本当に板に付いてる。最初は、デカプリオは本当にこういう役が似合うよなーくらいで見てたけど、観てゆくうちに、演技に説得力が増してきて惹きつけられ、好意的にみていた。


しかし、クリストフ・ヴァルツほんとにいいな。クリストフ・ヴァルツの存在感はもはやわたしの中で揺るぎないものとなった。紳士的な表情の中に時折あらわれる無邪気な残酷さと、例のニッコリ顔。アクセントや仕草の中に見える異国人感。特にeとiの発音で見せる「イー」の口元が悪戯っぽくていい。ブラッド・ピットは大好きだけど、クリストフ・ヴァルツの前では若干弱いな。かれの眼差しや仕草は側にいる女性を美しく見せてくれる。「側にいる女性を美しく見せてくれる。」クリシェのような言葉をサラッと書いてしまったけど、本当にそうなんだよね。おとなのけんか、ではケイト・ウィンスレット。かれの女性への眼差しは、いかにもその女性にぞっこんっていうような感じがして、その女性をこちらまでそういう目で見てしまう、そんな感じ。


写真はイングロリアスバスターズで、クリストフ・ヴァルツ演じるランダがなす「食べ物を大事にしないシーン」(宇多丸の映画批評より引用)。


***

16年の映画『マネー・ショート』

July 11th, 2016

IMG_0112

 2008年のサブプライムローンの問題が本当によく分かった。リーマンショックと言われてるけど、リーマンブラザーズの株価が0円になって破綻した理由をよく知らなかったから。本当に面白い映画だった。映画で観れてよかった。

 しかし、ここ最近のクリスチャン・ベイルの良さは止めようがないようだ。中学の頃に夢中だった『velvet goldmine』では、うだつの上がらないイギリスの田舎から出てきた、赤ら顔のますかき少年役だったのに。この映画での役は、ヘヴィメタルを爆音で聴きながら薄れたグレーブルーのTシャツ、素足でオフィスを歩く医学博士。であり天才トレーダー。こういう役はオイシイ。アメリカンサイコでの役は全く正反対と言っていいけど、それも大好きだ。(アメリカンサイコってハイエンドなスプラッタコメディなので気軽に観てみて欲しい)クリスチャン・ベイルは身体も素晴らしい。今回も何故かプールで泳ぐシーンがあったのだが、あのシーンはベイルの身体を見せるためだけのシーンであり本編に必要だったかはかなり怪しい。

 そして私が大好きなブラッド・ピッドはもっとオイシイ役。元はマンハッタンで名を轟かせたバンカーで、今はゴミ溜めのようなウォール街を嫌悪して、郊外へ移り、木炭と小便で洗浄した土にオーガニックの種を蒔いてサラダを食べ、定期的に腸洗浄をする潔癖な変人。ウォール街での契約や多額の証券の売却など、嫌なことをした後は消毒ジェルで手指を消毒する。彼は銀行への信用がなく投資のチャンスを掴めない若者2人に無償で協力する。ヒゲづらに眼鏡。眼鏡は金縁にブリッジのあるタイプだが極めて繊細で知的だ。オーシャンズシリーズで詐欺のために地震を予告しに来る地学博士に扮したことがあったけど、あの感じをもっと良くした感じと思って頂きたい。

 マネーショートはアメリカ経済の破綻に賭けた投資家たちの話。審査なしで許可が下りる低所得者向けの住宅ローンが多量に出回り、当然不履行が起こり、それでも価値が下がらない証券。格付け組織もカネ絡みなので、その安全性にAAAを付与する。誰しもが住宅ローンの証券は安心と思っていた。実際にはそう簡単な仕組みではなく、ダメな証券を束ね、別の商品として合成され、そう簡単に綻びがわからない仕組みになっていたようだ。ローン延滞などの末端データから、この複雑化したシステムはまもなく破綻するといち早く気付いたのが医学博士にしてトレーダーのクリスチャン・ベイル扮するマイケル。住宅ローンの証券に多額の保険金をかけ始めたのだ。その行為は全く周りに理解されず、安心なものに多額の保険金をかけることは気の触れた行為とみなされる。たしかに異常な行為だったのだ。しかし、その異常な行為が発する不思議な金の香りは3者の嗅覚の鋭い投資家に届き、4件の世紀の賭けが行われたわけだ。
 投資家として、破綻が起こり利益が出ることを願いながら、アメリカ金融が崩壊することを信じたくない心の矛盾。アメリカの熱海でおなじみのマイアミからたらたら流れだす腐った血、食堂で冷めたピザを頬張るときに発する自分では気づかない哀れみ。人は無邪気であればあるほど悲しく、賢ければ賢いほど苦悩するのだろうか。
 そして訪れた2008年の夏。まさにその夏、外資系コンサルファームに入社した私は秋が過ぎて冬になる頃までアサインされる仕事が無かった。あの真夏、長引く研修にうんざりしてた。多発したゲリラ豪雨や、無関心なエアコンの空調の温度を思い出していた。


***

ミランダ・ホッブス 弁護士 独身

March 2nd, 2014

IMG_1263  先日不意に、セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY)の第1話を見返しました。ウディ・アレンの映画の回でも書きましたが、この時代のニューヨークの垢抜けない暗さが好きです。特にミランダは初期、マニッシュでクラシックな服装をしてます。初登場では、持ち帰り用のサラダランチのブッフェでトングに挟んだチキンを振りかざしながら、男女の関係について皮肉を言ってこちらに視線を定めています。ブラックのジャケットの中に着た、ブルーに細い白のピンストライプのシャツに褐色の赤いリップを合わせています。とてもいいです。

 同じシーズンの別の話で、ミランダがレズビアンの振りをして事務所の上司の家へホームパーティへいくシーンがあります。この時もブルーのシャツに小さなタイを締めて、(短絡的にレズビアンらしくというつもりなのか)マニッシュです。相手のシドという女の子もグレーの軽く羽織る感じのコートに、プルシャンブルーにゴールドの大きい柄の入ったスカーフを引っ掛けています。黒いベリーショートです。

 しかし、よく調べてみるとこれは’98年の作品です。もっと古いかと思っていました。’98はそんなに昔ではないつもりですが。ミランダの周りだけ、やけに古めかしい装いですね。’04のシーズン6で、パリの公衆電話からキャリーがミランダに泣き言を言うシーンがあります。ブルックリンの自宅で朝食を準備をしていたミランダは白い大きな開襟のブラウスに首元にゴールドを合わせています。’04ともなると、周りはかなり洗練されているのですが、白い大きな開襟とゴールドという取り合わせは何とも前時代的でいいです。


***