暮らしの趣味」カテゴリーアーカイブ

The Ironing

March 3rd, 2014

IMG_1332  乾燥機から取り出してシワシワになってしまったピロケースにそのまま枕を詰め込んでいたら、「そんなシワシワな枕じゃ」と指摘され、こんな夜中に・・・とガックシきながらアイロンをかけました。ブリーフも「シワシワだと士気が」というので、かけています。前どこかでも書きましたが、夜のアイロンがけには少し切ない思い出があります。コンサル時代は朝方帰宅して、アイロンがけをしてからベッドに入っていました。帰宅してすぐは頭が興奮していて眠れませんでした。

 何年前かは忘れてしまいましたが、あの夏は特別忙しく、帰宅すると4時頃になっていたと思います。シャワーを浴びて髪を乾かす気力は全く残っていません。何とかお化粧だけ落として会社着を脱ぎ、髪をほどいて白い綿のワンピースの寝間着に着替えてから床にぺたんと座って、アイロンがけをするんです。翌日着てゆくシャツやハンカチがある日はそんなものを、かけるものがないとパジャマやピロケースやティーシャツなんか、とにかくなんでもいいから、アイロンがけが必要でした。

 仕事が終わってからも1,2時間は、脳みそは銀色の光を放って覚醒したままです。ブルーライトを蓄光しているんだと思います。夏の夜、ベランダを開け放しておくと、走り去る車の音がはっきりと聞こえてきます。信号が赤になると車がとまって、青になって一呼吸置いて走り出してゆく単調なリズムがあります。アイロンがけをするときは音量をごくごく絞って海外ドラマを流していました。英語の会話が聞き取れないほどの柔らかい微音となって単調なリズムと一緒になります。20分ほどそうしてアイロンをかけていると、驚くほど頭のなかが空っぽになっていきました。脳みそもだんだんとダウンライトしてゆき、最後は「じん」という微かな芯だけになります。外が少しづつ明るくなり始める前にシーツに入ってゆくと、すっと一瞬で、面白いほど眠りに落ちてゆきました。


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マッシュルームの丸干し

February 26th, 2014

IMG_1130  干し野菜に凝っています。特にマッシュルームは以前から安く買えた時にまとめて干していました。先日も2パックが束ねられて50円でおつとめをしていたので、迷わず買ってきて、すぐに干しました。

 最近では按田餃子の按田優子先生の『冷蔵庫いらずのレシピ』のメソッドをフル活用し、竹ざるをやめて串刺しにして干すようにしています。串に刺して宙吊りにすることで、どこにも触れない状態で干せるので、竹ざるで干すより早く乾燥します。串を渡す場所さえ設けておけば、手元で発生したクズ野菜をすぐに串刺しにして干せます。私はこの菜箸で構築したスペースを「本部」と呼び、毎日せっせと野菜を串刺しにしております。

 いま台所を通ると、ポルチーニ茸のような芳香がプンと鼻をつきます。以前はスライスを干していましたが、按田優子先生のメソッドではためらいなく丸干しができます。とても可愛い姿で並んでおります。干したマッシュルームはスープに入れて煮込むと大層深い旨味が出ます。旨味を出したあとのマッシュルームは出し殻になってしまいます。一方しめじは、出し殻になることなく、良い食感と後味を残してくれます。


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フランネルのドリッパー

February 23rd, 2014

IMG_0711  日に何度もコーヒーを飲むので、ウィークデー用の豆は安豆です。コストコのカークランドの1kgで1,480円の豆で、スターバックスのハウスブレンドです。コストコが切れたら成城石井のその時一番安い豆です。安豆を、ラクしようとコーヒーメイカーで入れるんです。しかもフィルターは安さに惹かれて買ってしまった100円ショップのものでペラペラです。すべてが安普請です。こんな状況でちょっとでも雑味を取ろうと、安フィルターを使うときには、フランネルのドリッパーを重ねています。ネルの上に薄い紙フィルターを重ねその中に挽いた豆を入れます。紙を重ねるので後片付けは大変ではないです。このネルのドリッパーは毎日使うので水に浸した状態で冷蔵庫で保管です。韓国のステンレスの飯入れ「パプクル」に水を張ってネルを保管してます。しばらく使わない時は、干して乾かして保管です。

 ただ、雑味の取り除きを間違って、旨味やコクまで取り除いてしまってるんじゃないかと、とても不安です。コーヒーを常用しているのでそんなことに構っては居られない、と思いつつ、です。

 でも、ネルのドリッパーを水を張ったパプクルに保管して毎日使うこと自体、とても気分いいです。ネルのドリッパーは、その気分でコーヒーを飲ませてくれます。


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わたしの生活

February 21st, 2014

IMG_0891 IMG_0869 IMG_0879 IMG_0888  ウディ・アレンの’93の映画、”マンハッタン殺人ミステリー”(英:Manhattan Murder Mystery)はアレンの映画の中でも好きな方に入ります。わたしがアレンの映画に求める要素*1が全て揃っている上に、時代感と洗練されすぎていないニューヨーク感が、説明できない良さを醸しています。

 内装美術について、たとえば伊丹十三の映画の内装*2が完璧だとすると、アレンの映画は7割くらいにまとまっていると思います。その3割に「遊び」を感じます。遊興の「遊び」ではなく、いわゆるネジなど結束部分に持たせる「遊び」です。この遊びは、「あえての外し」や「親しみやすさ」ではなく、都会育ちのアレンから出る、都会の人特有の多少のダサさであり、本物のセンスなんだと思います。

 アレン演じるハリーの勤めるハーパースの事務所、真鍮のスウィングする照明。ベッドサイドを散らかした本や新聞と電話器、髪を梳かしたあとサプリメントのピルを取るダイアン・キートン演じるキャロル。週末マンハッタンに帰って来た、ブラウン大学に通う息子にツナの料理を作ったハリー。帰宅したキャロルとの、キッチンでの口論。軟派な新聞。白いタートルネックに合わせた、白いスーツ。

 アニー・ホールやマンハッタンのように映画自体の存在がカッコイイというものでもなく、インテリアのように全く漏れのない均整もなく、セプテンバーのような湿った感傷*3もない、のに説明できない良さがあります。この良さは全く説明がつきません。

 わたしが生活のセンスを見直すとき、思い出すのがこの映画です。

 

*1 ウディ・アレンによる監督、ウディ・アレンによる脚本、ウディ・アレンの(長めの)出演。

*2 一番最高なのは、伊丹さんの湯河原の自宅を使った『お葬式』。お葬式に出てくる東京の家は麻布狸穴町の伊丹さんの自宅だったのでしょうか。

*3 そもそも、ミア・ファローが好きじゃないです。ウディ・アレンについていくパワーが無いです。


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