食卓の風景」カテゴリーアーカイブ

ルヴァンの綺麗なパン

April 4th, 2014

IMG_2078  代々木上原のルヴァンのパンが美味しいことは聞いていましたが、ルヴァンのパンを手にするまで、パンが美しいことを知りませんでした。

 このパンをまな板に置いて切ろうとした時、あまりに綺麗だったのでためらい、よく見ました。白や焦げた茶や粉の色が点描みたいです。切り込みのおうとつがそのまま焼き跡になって立体的な縄の柄になっています。バゲッドの縄柄なんてありふれているはずなのですが、そんな当たり前のことに気づいて感心してしまいました。ルヴァンのパンにはそういうオーラがありました。よく知っている当たり前の事象が、ふと特別に見える時があります。そういうのって何が他と違うんでしょう。オーラとしか説明のしようが無いです。このルヴァンのパンを絵に描いている人がいるんです。存在感に特別さがあるので、絵に描かれることもそう不思議ではないです。彦坂木版工房「ルヴァン展」です。ちょうど今、東京でやっています。

 私の好きなパン屋さんは、あざみ野の徳多朗と渋谷のヴィロンです。バゲッドだけで比較すると、私はヴィロンが好きです。圧倒的な旨さだと思います。バルサミコをオリーブオイルで伸ばしたもの(決して溶解しないのですが・・・)に焼いたバゲッドをつけて食べます。それだけで大満足の旨さです。ヴィロンで働いていた後輩によると、ヴィロンは粉から水に至るまで全てフランス産で統一しているそうです。倉庫に山のようにコントレックスが積み上げてあるそうですよ。徳多朗は国産です。いつかパリで焼きたてのバゲッドを丸かじりしてみたいです。いわゆる文字通り「バゲッドの丸かじり」です。(わかりますか。東海林さだおさんのオマージュです。)


***

紀文のちくわ

March 27th, 2014

IMG_0922  今年最後のおでんでした。

 実家のおばあちゃんが作るおでんには、スルメが入っていました。私はこの風味があまり好きじゃありませんでした。友人で、「おでんは、おでんの素で作るのが気分」という者がいます。その気分は何となく理解することが出来ます・・・ノスタルジーというものは説明がつかないのです。おばあちゃんもおでんの素を使っていました。あの赤と黄色と黒のパッケージは、食品庫を開けるたびに隅にあっても必ず目に入ってくるんです。余程のコントラストなんでしょう、いま目をつむっても蘇るほどの強い映像記憶です。

 母は九州の人で牛すじを好みます。母の実家の近くだったでしょうか、母と幼い妹と私が3人で並んでカウンターで長浜ラーメンを食べているという記憶があります。ラーメン屋さんのカウンターにおでん鍋があって、母がラーメンとは別に牛すじの串を取ってくれました。中洲の屋台でもラーメンとおでんはセットですね。妹はその後、牛すじや鶏の軟骨好きに成長しましたが、私はどちらかといえば正肉にしていただきたい人間です。中学生の頃、セブンイレブンのおでんに牛すじ串が登場したとき、彼女らは喜んで買い喰いしていました。

 私が作っているおでんは、いたって関西風かなと思います。鰹節と昆布でとった一番だしに、薄口の白むらさきと塩を入れるだけです。あとはこの大量の練り物が甘みを出してくれます。練り物ばかりだと笑われてしまうほど入れます。特に丸いふわふわの魚河岸(うおがし)は必ずです。あとは、なるとも大好きで斜めに大きく切って入れます。ちくわぶは東京に来てから知った味です。焼きちくわには「紀文」の焼きが入っていますので、練り物をまとめるリーダーになってもらっています。こういうしっかり者がいると場がまとまるのです。練り物は袋から出して入れるだけだから楽です。ほかの具も、下茹でをするのは大根と卵だけで、あとは人参、じゃがいもを生から投入します。シーズン中は時間があるときに餅巾着を作っておいて冷凍していました。醤油や味醂でもんだ鶏もも肉と干ししめじと餅をいれて爪楊枝で止めておきます。

 東京に来て知ったおでんの具のひとつに「すじ」があります。牛すじではありません。鮫の軟骨と魚のすり身をまぜた練り物です。毎月28日にある目黒の不動尊の縁日に出ているおでん屋さんで初めて食べました。東京でずっとおでん屋さんをしていて、不動尊の縁日も何十年も出ているという無口なおばあちゃんです。おすすめのネタを聞いたら「すじ」でした。ここのおでんが大好きです。赤ウインナやたまごなんかを、何度もおかわりして、生ビールをごくごく飲みます。真夏でもおでんで最高な気分になれます。


***

尾山台のオーボンヴュータン

March 19th, 2014

IMG_1862  気の利く友だちが先日、尾山台の「オーボンヴュータン」(AU BON VIEUX TEMPS)の焼き菓子を持ってきてくれました。焼き菓子で気になっている店だったのでちょっとラッキーでした。

 プチ・フール・サレという甘くないパイです。焼き菓子というと当然甘いクッキーなんかを想像していたので、意外でした。でもよく味わうとバターと粉の味をダイレクトに楽しめます。むしろ甘味がある焼き菓子よりも香りは上かもしれません。チーズ、黒ごま、白ごまの3つの味です。私は白ごまが一番すきでした。白ごまの控えめなコクがバターとばっちりでした。塩気のバランスもオッケーです。ワインのあてに出してもいいなと思います。男性へも良いです。皆さんも手土産に困ったらぜひ試してみてください。日本橋の高島屋にも置いているようです。

 その友だちは、いくつか焼き菓子のお店を探しているというので、碑文谷の「マッターホーン」(MATTERHORN)を伝えておきました。ここも気になっているのですが、まだ試してないのです。

 こうやって気になるものを伝えておけば、いつか誰かが持ってくるんじゃないかという横着というより、いやしい企みです。


***

柳川もどき

March 17th, 2014

IMG_0800 IMG_0797  母が作ってよく食べさせてくれていました。父の好物だからでした。

 どじょう鍋のどじょうの代わりに挽き肉を使うという「柳川もどき」は、もとは辰巳芳子さんの料理です。(どうも、辰巳芳子さんに「レシピ」という表現は違う気がして・・・。)「コツは合わせただしが冷たい状態で、挽き肉を入れてどろどろに混ぜること」というのも毎回のように聞いていました。自分が家庭を持つようになって、母の作っていた料理をなんとか思い出しながらこしらえ、食卓に出すときの、少し晴々しい気持ち。反応が良いと、いつもより嬉しく、反応が無いと、いつもより寂しいです。

 母の得意料理はすべて、父の好物でした。先日帰省したとき母は「私はこの人が喜ぶことを第一に考えてた、お前たちの好物を作ろうなんて考えてもいなかった」と振り返っていました。両親の男女の絆の強さに、ジンとしました。子どもとして置いてけぼりにされている寂しさを、幼かった頃は感じていませんでした。それが当たり前でそれ以外がなかったからです。今もまた、独立して自分の家庭を持っているので感じてはいません。ただ、今の自分が、幼かった頃の自分を思い出す時だけ、少しそんな気持ちになります。ただ懐かしいだけじゃないけど、辛いわけでも泣きたいほどでもない、もうほとんど見えない古い痣です。


***

ジェルブレのビスケット

March 13th, 2014

IMG_1280  ひとりの時はなるべく食事の支度をしたくないのが妻というものです。わたしなぞは、「夜いらない」日などは、無意識に朝からスイッチをオフしてしまうようです。食べるのも面倒なので一日中食べないことになってしまいます。

 また、そうじゃない日も自分のためにお昼をととのえることは、よほど乗り気じゃない限りしません。丼や麺類は簡単ですが、炭水化物メインの食事は念のため避けています。仕事や用事がない日はエネルギーを使わないのでそれで済みますが、何かある日は何か食べておかないと心配になります。

 ジェルブレ(Gerblé)は近所のスーパーにあって気になっていたのですが、ちょっとした食事の代わりにいいなと思って買ってみたら美味しかったです。「フランス物」というのも気分いいところです。低GIとのことなので、一応、オーケーということにしています。これはレモン味です。全粒粉の硬い粒とレモンの風味がいいです。甘みより香りが立っている点も気に入りました。甘いものは甘いもので別のところで楽しみますから。


***